線維筋痛症学会で発表&参加して
2019年10月5日~6日に行われた「日本線維筋痛症学会第11回学術集会」で発表&参加しました。
興味深い演題が沢山ありましたので随時お知らせします。
オフセット鎮痛を用いた線維筋痛症のバイオマーカーの検討
オフセット鎮痛とは?
わずかな痛み刺激の減少により、実際に感じる痛みが大幅に減少するという現象を利用するものです。
これを利用すると線維筋痛症とうつ病ははっきりした違いが出るということです。
小児の線維筋痛症患者でも同じ現象が見られます。
そこでバイオロジカルマーカーに利用できるのではないか、と現在研究が進んでいます。
倉田二郎先生*のお話
倉田先生の研究方法は、 46℃前後の温熱刺激を与え、これを1℃だけ増加させた後すぐに元に戻し、痛み感覚を測定することにより観察されます。
短くまとめると、刺激が続いている中で、少し刺激が増えてから減ると「大幅に刺激が減った」と感じます。この時に下降性抑制経路の賦活と共に、脳の報酬系、つまり刺激が減ってよかった、嬉しいと言う感じが脳内に生じます。この反応をfMRIで検査します。
その結果、健常人では下降性抑制経路と報酬系に関係する脳の部位が活性化します。一方、慢性疼痛患者ではこれらの活動が低下することが明らかになりました。この機能低下が、慢性疼痛の特徴であることがわかります。
オフセット鎮痛は痛み期間が長いほど現れ方が小さくなります。それでもオフセット鎮痛は、線維維筋痛症患者にもちゃんとあります。持続する痛み刺激によって下降性抑制系と報酬系が抑制されているので、このメカニズムが明らかにできてくると治療に応用することができるのではないかと期待されます。
この研究はfMRIを利用するので、まだすべての患者さんに利用できるわけではありませんが、慢性疼痛、線維筋痛症の痛みのメカニズムを知ることが大きな成果です。
*倉田 二郎先生
東京慈恵会医科大学附属病院
麻酔科講座 准教授
ペインクリニック科
倉田先生と直接お話しさせていただくことができました。
写真ご提供:倉田 二郎先生(向かって左)
【発表】 演題「患者力~患者は回復する力を持っている~」 橋本 裕子
橋本は「患者力~患者は回復する力を持っている~」の演題で、患者にとっての重要な他者と出会うことで大きく改善に向かった例を発表しました。他患者との出会い、ピア(患者同士である橋本)の関わり方が、患者や家族にとっていかに重要であるかを痛感した例でした。
倉田先生は多くの患者に接していらっしゃり、線維筋痛症患者の困難さをよくご理解されていました。また、「線維筋痛症患者さんは炭水化物の摂取が多い」ことにも気づかれていたので、橋本は「食べる事自体(噛むのがしんどい、顎や首が痛い)、あるいは調理、箸を持つことが辛いので、簡単におにぎりやパンで済ます例は多い」と話しました。
経済的困難も原因しているなど、患者の困難さについて話し合いました。
明るい笑顔の素敵な先生でした!
☆情報発信・写真提供をご快諾いただきました倉田先生、学会発表にあたりご尽力いただいた皆様に感謝申し上げます。
★第2弾をお楽しみに!★